無題

電話は父の兄でもなく病院からでもなかった。姉からだった。
父の死を願っている自分に気付いた。
僕は一晩中病院から連絡が来るのを待つだろう。
明日は嬉々として今日の事を学校の先生に報告するだろう。
「浪人することに決めたし、父が死んだので学校を辞めます。」
父の葬式を想像する。スーツを着れるのが嬉しい。僕は泣かない。
「息子さん、気丈に振る舞って立派ねえ。」
そして葬式の後、一人でこっそりと泣くフリをする。
人に父が死んだ事を同情されたら、
本当は辛いのに、相手に心配かけまいとして笑顔を見せる、フリをする。

もし、父が死ぬとして、死ぬ瞬間に立ち会ったとしたら、
僕は何をすればいいのか。何を言えばいいのか。
これから何処へ行くのかと聞いてみたい。
でも父は失語症で喋れないだろう。
父の口はどう動くのだろうか。
父の目はその時どんな風に輝いているのだろうか。
父が死んだ後の母はどんな様子か。
もし、父が死ななかったらどうなるのだろうか。
何も考えつかない。僕は嬉しいだろうか。
父はイライラするだろうか。
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by miboujin | 2005-02-08 01:44 | かたはら痛い日記
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